アフターコロナの中国で消費急増が予測される5大産業の現状と未来
レポート
本記事は、中国の易観智庫網絡科技有限会社※(本社:中国北京/代表取締役社長:于揚/Edward Yu、以下:Analysys社)が発表した下記記事を翻訳した。
教育、医疗、新零售等五大行业,面对疫情后可能出现的反弹,需要做哪些准备?(2020-03-10)
※ Analysys社は2012年に創業以来、ビックデータとアルゴリズムを核とした製品、プラットフォーム、ソリューションを構築し、データ活用の成功事例を数多く蓄積し、中国を代表するビッグデータアナリティクス企業となった。企業がビックデータを効率的に管理し、サービス運営を洗練させ、データに基づいたクローズドループマーケティングによる収益成長、コスト削減、効率化を実現し、運用リスクを大幅に回避、無駄のない成長を実現することを支援している。
2020年3月までに、Analysys社が観測しているスマートデバイスは24.2億台に達し、MAU(月間アクティブユーザ数)は6.1億人に到達した。データサンプルは中国で利用されている主要なアプリ1200以上をカバーしている。この中には、金融、eコマース、自動車、音楽など15の人気分野が含まれている。Analysys社は、海外企業が中国国内のインターネットビジネスを理解するための絶好の機会を提供している。
本記事は、Analysys社の許諾のもとに翻訳・掲載している。
教育、医療、ニューリテール※など、5つの主要産業においては、新型コロナウイルス収束後、一転してリバウンドによる消費急増の可能性がある。そのリバウンドのターニングポイントを逃さないために、事業者がしておくべき準備とは?
※ モバイルインターネットとデータテクノロジーを用いることで、小売業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現し、オンラインとオフラインを融合させた新しい消費体験を提供する概念
現在、新型コロナウイルスの流行により、壊滅的被害を受けている産業が多数発生し、様々な課題に直面している。その一方で、オンライン教育、医療のDX(デジタルトランスフォーメーション)などが進んでいる。また、在宅隔離によって、通販やデリバリー事業などニューリテール分野の需要が急増している。しかし、旅行、交通業界への影響は大きく、状況打開のための解決策を模索している状況である。
一方で、新型コロナウイルスの流行が落ち着くにつれ、市民は普段の生活を取り戻してきている。その際のリバウンドによる消費急増に対して各業界はどのような準備が必要なのだろうか?
Analysys社は、教育、医療、ニューリテール、旅行、交通の5つの産業のDXに関する調査を行った。新型コロナウイルス収束後の各業界が掴むべき機会を予測し、企業と共にウイルスと戦い、この困難を乗り越える必要があると考えている。
1. オンライン教育
オンライン教育アプリのユーザー数がピークを迎えたのと同時に、競争は激化し、市場集中度(Market Concentration Ratio)が高まっていく。
(1)新型コロナウイルス流行期、主要なオンライン教育プラットフォーム各社が無料講座を開講し、積極的に広告を出稿。
この競争において、多くのユーザーが最も有名な教育プラットフォームを選択している。いわゆる「マタイ効果※」が顕著に現れていることが分かった。
※ 条件に恵まれた研究者は優れた業績を挙げることでさらに条件に恵まれるという現象のことであり、それは科学界以外の様々な分野でも見ることができる。「金持ちはより金持ちに、貧乏はより貧乏に」と要約できる]。この概念は名声や地位の問題にも当てはまるが、要約の文字通り経済資本の累積的優位性にも当てはめることができる。(Wikipediaより)


Analysys社のデータによると、初等中等教育を学べるサービスを提供している「作业帮(Zybang)」は、DAU(1日あたりのアクティブユーザー数)において、長期間トップを維持している。新型コロナウイルスの流行が収まらず、学校の休校期間が延長されたが、作业帮(Zybang)は迅速な対応を行い、競合との差をさらに広げている。これと似たような傾向が言語教育、職業訓練などの領域にもみられる。また、教育プラットフォームの「腾讯课堂(Tencent Class)」がB2B2Cモデルの強みを最大限に活用し、急激な成長を遂げた。
(2)新型コロナウイルス収束後、オンライン教育サービス企業の継続的な運営は、さらに大きな課題に直面し、生存競争が激化。
多くの新規顧客の流入により、教育の質の担保と効率的なサービス提供が大きな課題となっている。また、中小企業にとって広告や宣伝、教育コンテンツの無料提供を続けることは大きな負担となる。結局のところ、教育コンテンツと運営効率が優れている企業が、さらに市場シェアを拡大しているのである。
同時に、一部の従来型の教育サービスもオンラインサービスの導入によって成長している。そのため、業界内の競争が激しくなり、新しい業界地図が急速に形成されている。
新型コロナウイルス収束後、オンライン教育における重要な成長機会
(1)オンライン教育モデルの強みを活かし、差別化された教育体験を提供。
今後、新型コロナウイルスの流行が収まるにつれて、市民は普段の生活を取り戻すだろう。その時に、オンライン教育サービスがユーザーを留められるかどうかは、ユーザー体験とその教育効果が重要となるだろう。
そのため、企業はオンライン教育モデルのメリットをさらに活用しなければならない。オンライン教育の柔軟性、リソース配分の効率性、パーソナライズされた教育を強調し、オフライン教育とは異なるユーザー体験を提供する必要がある。
例えば、AIによる最適な学習コンテンツの推薦、スマートインタラクティブ・ティーチング、ナレッジマップ、スマートトレーナーなどの機能を提供することである。また、技術革新によって教育効果を高め、AIによるアダプティブラーニングを実現させる。そして、ユーザーがオンライン教育ブランドに対する価値を認め、新型コロナウイルス収束後も利用頻度を増加させることが重要である。
(2)企業向けビジネスの開発によって、従来の教育業界のDXを促進。
「好未来(TAL Education Group)」、「学霸君(Xueba100)」、「洋葱学院(Onion Academy)」などの企業は、大学および教育機関に対して、自社の技術に基づいたライブ放送プラットフォーム、技術支援、ソリューションなどを提供している。従来の教育業界に対するこのような動きは、ハードウェアの普及からリソースの相互活用、シミュレーションを経て、教育業界のDXを大幅に促進した。
これにより、オンライン教育サービス企業の業務は、教育コンテンツの提供からオンラインプラットフォームの運営、技術開発にまで拡大している。そして、教育管理プラットフォーム、音声分析による回答評価、学習データの収集および分析などの機能の開発と活用によって、従来教育のDXを促進し、事業範囲をさらに拡大する見込みである。教育業界における負担軽減と業界のDXが政策により推進され、教育業界は新しい発展が求められている。
2.インターネット医療
2020年初頭、湖北省で発生した新型コロナウイルスは爆発的に全国に広まり、一般市民、患者、医療スタッフ、政府は医療の問題に直面することとなった。
そこで、インターネット医療企業がオンライン無料診断サービスの提供を開始し、併せて、各医療機関も病院の負担を軽減させるために、迅速にオンライン診断サービスのプラットフォームを構築した。また、一部の都市で医療保険のオンライン支払いサービスが開始され、病院のDXを推進したことで医療市場全体を拡大させる結果となった。
Analysys社の分析によると、新型コロナウイルスの流行によって、インターネット医療の市場規模は2020年に1960億9000万元に達する見込みである。また、年間成長率は前年比63.7%増になると予想され、2014年の59.3%を超え、2013年以来、最高の成長率となる見込みである。

新型コロナウイルス収束後、医療業界における重要な成長機会
(1)病院との連携は、医療機関向けサービスを提供する上で重要な成長要因であり、互いのシナジーにより、新しい、あるいはより高いレベルの共存共栄モデルが生まれるだろう。そして、このチャンスを掴んだ企業は大きく発展することになるだろう。
統計によると、Tier2の中規模病院(病床数100-500)の少なくとも半数以上が顧客接点を確立している。また、Tier2病院のうち11%が独自のアプリを使用している。Analysys社のデータによると、2019年2月から2020年1月の1年間でアプリのアクティブユーザー数は、254%増加した。

今後、2年から3年で、受付、問診などのデジタルフロントサービスが完全に形成され、インターネット医療の構築と運営は最盛期を迎えるだろう。
「2019年中国インターネット医療開発調査報告書」によると、80%以上の病院がインターネット医療システムの構築を2年以内に完了する予定であり、構築時間とコストは徐々に減少する。全体的なカバー範囲の拡大により、外来医療機関との連携がさらに強化され、医師と第3者のサービス提供者によって、病院以外のサービスモデルが作られる。
(2)スマート医療機器の普及率が上昇するだろう。新型コロナウイルス流行時に、スマート医療機器のデータとオンライン診断サービスの実用性が検証されることとなるだろう。そして、大量の診療およびヘルスケアデータが収集され、そのデータ活用が進むと考えられる。また、5Gが普及するにつれて、スマート医療機器が家庭で利用されるようになり、一般ユーザーにとって、大手医療機器メーカーが今後重要なパートナーとなるだろう。
(3)薬局の積極的なデジタル化によって、医薬流通業界全体のDXが進むだろう。実店舗型薬局の集客が打撃を受けたため、店舗型薬局とオンライン薬局の統合が進められている。しかし、医薬品ECサイトは、物流の問題により配送が遅れ、ユーザー体験に影響が出ており、店舗型薬局と連携して発展していくことが主流となるだろう。そのため店舗型薬局は、生き残るために革新的なリテール手法を模索する必要がある。また、医薬品のO2Oは発展のための適切な時期を迎えており、成長のための大きな原動力となるだろう。

まず店舗型薬局のDXにおいて、焦点が会員運営、サービスの効率化・拡大などの方向性に置かれる。また、流通ルートのDXをさらに発展させる機会として捉えることができ、医薬品流通会社は製薬会社と薬局を結び、業界のDXの主力となるだろう。
また、SaaSシステムは低コストで利便性が高いため、店舗型薬局でさらに普及していくだろう。医薬品流通業界市場の大半を占める中小規模の薬局は、B2B/B2Cの医薬品メーカーのメインターゲットで、仕入れコストや在庫の削減、適切な商品選定が主な用途である。大手薬局チェーン店が実店舗でのDXに力を入れていくだろう。また、中国の大手インターネット企業が出資による参加という形で、薬局のDXに参入するかもしれない。
(4)医療企業にとっての新たな課題は、若年層ユーザー向けのサービスを考えることであり、勝ち残るためには優れた成果を出さなければいけない。なぜなら、インターネット医療の主要なターゲットは、若年層ユーザーとなるからである。医師は、ストリーミングメディア、ショートムービーなどを通じてオンライン医学教育を実施することで、自身のブランド影響力効果を拡大し、企業のプロモーターとしての役割を果たすことができるだろう。
3.ニューリテール
Analysys社のデータによると、インターネット通販サービスのMAU(1ヶ月あたりのアクティブユーザー数)は、新型コロナウイルスの流行、工場の再開、物流問題による影響を受けている。

新型コロナウイルスが、ニューリテール戦略における最も代表的なインターネット通販サービスに大きな影響を与えており、この影響はしばらく続くと予想されている。2020年1月の新型コロナウイルス流行によって、感染予防商品の需要が増加した。そのため、2020年2月のMAUは通常の春節時期よりも大幅に増加した。しかし、物流、倉庫、工場の稼働が再び遅れた結果、購入した商品のほとんどが出荷できず、配達にも遅れが生じたため、ユーザーの購買意欲が下がり、アクティブ率も低下した。そのため、2月以降はMAUが通常より少なくなることが予想される。
しかし、2月中旬以降、中国国内の新型コロナウイルス流行が収まったため、物流、倉庫、工場が正常に動き始め、インターネット通販サービスで徐々に通常通りの取引ができるようになるだろう。
美容、衣料品、生鮮食品などのカテゴリーは、驚くべき消費の上昇が起こるだろう。
「ニューリテール」における新型コロナウイルス流行の悪影響は完全には消えていないが、特定のカテゴリーにおいて消費のリバウンドが顕著になると予想される。
(1)美容と衣料品
物流的な要因に加えて、ほとんどの市民の外出自粛によって社交の場が失われることで、一時的に美容と衣料品は価値を失い、消費者の需要も抑制した。 しかし、通常の生活が取り戻されば、これまで抑えられていた消費者心理の影響を受け、社会全体の消費需要は爆発し、美容品、衣料品は売上の大きな転換点を迎えるだろう。

(2)生鮮食品
Analysys社のデータによると、新型コロナウイルス流行時の大手生鮮インターネット通販サービス企業のDAUは大幅に増加しているが、こうした企業の多くは大・中規模都市に位置し、店舗も限られているため、大多数のユーザーは生鮮インターネット通販サービスの利便性を享受しておらず、ニーズが十分に満たされていない。
インターネット通販サービス業界が正常に戻った後、生鮮食品の基本的な需要、特に海産物、果物など地域特有の商品に対する高い需要をベースに、ユーザーの購買意欲が大幅に増加すると予測される。
チャンス到来に向けての準備を怠ってはいけない。
これからの機会に対して、企業は成長のチャンスを逃さないようにしっかりと準備をしておく必要がある。
美容・化粧品のニューリテール企業は、優れたデジタル運用ツールを最大限に活用し、セグメント化されたユーザーグループに基づいて、新型コロナウイルス流行時のユーザー行動を追跡すべきである。そしてターゲットユーザーに対して、大きな影響力を持つ要因とチャネルを分析する必要がある。
したがって、既存ユーザーに積極的にアプローチし、パーソナライズされたキャンペーンを用いて再購入を促進するべきである。一方、新規ユーザーへのマーケティングの焦点として、ブランドに合致するKOL(Key Opinion Leader、製薬企業の販売促進に影響力を持つ医師などの専門家)との連携を強化すべきである。
ニューリテール企業の衣料品については、上記に加え、在庫整理の準備だけでなく、新製品の計画をする必要がある。衣料品は非常に季節性の高い商品であるため、新型コロナウイルス流行の間、オンラインとオフラインの両方で過剰な在庫を抱えてしまった。これから夏服の販売時期を迎えるが、春服の販売利益が大幅に減少するだけでなく、春服の販売は大変難しくなる。このように販売時期を外れた商品や販売時期を迎える商品に注意しなければ、大量の在庫が発生、キャッシュフローの悪化がおこり、その後の生産や業務に影響を与える恐れがある。
同時に、季節の変わり目であるため、夏服の新作発売に一部影響が出た可能性がある。そのため、ビッグデータを活用し、秋の新商品と夏の新商品をセットで考えて、デザインコストを抑えるための企画をする必要がある。そうしなければ、キャッシュフローの安全性を確保できず、衣料品の消費増加の機会を把握できない恐れがある。
生鮮食品類のニューリテール企業は、物流の準備を特に重視すべきである。大手物流企業は徐々に通常業務に戻っているが、感染予防商品の納入を優先したり、従業員が仕事に復帰できないなどの理由で、春節以前の物流状態に戻るには、ある程度の時間が必要になる。そのため、輸送優先度が高い生鮮食品は、物流に必要な時間を見直し、低温で鮮度を保つ物流環境を構築する方法を模索し、必要に応じて低温輸送方式などを選択しながら、包装をさらに強化する必要がある。
また、ユーザーは地域別の生鮮食品の販売再開に気が付かない可能性がある。これに対応するために、企業はマーケティング活動に力を入れ、さらにユーザーの心理的不安を取り除くために、食品安全対策に取り組む必要がある。
4.オンライン旅行
新型コロナウイルス収束後、旅行業界に以下のような機会が訪れる
(1)マーケティングアップグレード

Analysys社のデータによると、2020年1月のオンライン旅行市場のMAUは2億6,045万人に達し、前年比10.33%増となった。春節は中国国民にとって最も重要な祝日であり、多くの人は今年初となる連休に旅行の計画を立てていた。春節時期の旅行は、ますます一般的になってきている。
この突然の新型コロナウイルス流行は、人々の生活に混乱をもたらした。外出できないことで増加する「クラウドツーリズム( 現地に行けず、ネットで旅行先の情報を堪能すること)」の閲覧数は、国民の蓄積された旅行需要を早急に満たす必要があることを示している。したがって、業務停止期間は、観光会社がチャネルを整理して製品コンテンツを最適化するのに最も適している時期であり、常にマーケティング意識を持っておくべきである。
旅行意欲のあるユーザーや新型コロナウイルス収束後に旅行意欲のあるユーザー、それぞれのニーズを導き出し、ユニークな旅行コンテンツと専門的なプレゼンテーションでマーケティングの品質を確保することは、旅行業界のマーケティングにおいて重要である。
(2)サービス品質の向上
観光体験がパーソナライズされ、より高品質な観光サービスが好まれる傾向が顕在化し、観光産業は競争段階に入った。またサービスについては、高品質であると同時に、ユニークなプランとリーズナブルな価格が前提になるだろう。
一般ユーザー向けの観光用スマートデバイス、専門サービスチームは、観光企業がサービスの構造を最適化し、サービスバリューチェーンをアップグレードするための重要投資分野になっている。したがって、今後の観光企業のサービス品質についての方向性は、サプライチェーンの統合能力を核として、プラットフォーム運営能力とサービス効率を組み合わせた総合的な競争を実現することが必要である。
(3)旅行業界のDX
さまざまな種類のDX投資は、観光商品とサービス品質を向上させるため、重要な推進力となっている。DX投資はすでに事前相談と予約、旅行、消費などの場面をカバーしており、個人客の旅行体験の最適化に役立っている。将来的に、実際の旅行先のニーズを細分化すること、複数の角度からニーズの接点を確立することは、DXのさらなる推進によって旅行商品の差別化を実現できるし、旅行時の突発的な需要も満たすことになるだろう。
5.交通移動
2020年春節の時期に、突然発生した新型コロナウイルスの患者数は、急激に増加している。感染予防のため政府は、在宅隔離、仕事や授業の延期、交通規制などを行い、市民の外出を最大限に抑制した。その結果、オンライン予約タクシー事業は、短期間で莫大な損失を出した。Analysys社は、2020年の春節期間中、中国のオンライン予約タクシー市場の1日あたりの損失は5億8,000万元以上だと予想している。

なお、Analysys社のデータによると、2020年2月10日~2月24日に、政府が企業の業務の制限を緩和したため、オンライン予約タクシー市場のDAUに増加傾向がみられる。
新型コロナウイルスによって、オンライン予約タクシー市場が一時的に混乱したものの、流行が落ち着いたのち、ライドシェア市場の巨大なニーズに牽引され、急激な回復が見込まれている。

Analysys社によると、新型コロナウイルスは、中国交通移動市場に以下の長期的影響をもたらすと予想されている。
(1)オンライン予約タクシー会社の企業分布が変化しており、既存オンライン予約タクシープラットフォーム及び自動車メーカーが交通移動市場に参入。
新型コロナウイルスの流行によって、外出自粛が広がり、オンライン予約タクシー運転手の大量解雇などが発生した。そのため、資金力がなく、金融機関からの借り入れに依存する地方の中小レンタカー会社の多くが、業界規模縮小の巨大な打撃を受け、撤退している。
Analysys社はオンライン予約タクシー市場について、新型コロナウイルス収束後は、強力な資本力、高いリスクヘッジ力、運転手の管理能力が高い大企業に牽引される考えている。なお、オンライン予約タクシーにレンタカーを貸し出す事業は利益が大きく、投資回収期間が短いのが特徴であるという理由から、近年多くの自動車メーカーとレンタカー業者がオンライン予約タクシー市場に参入した。例えば「BYD」、「一汽(FAW Car Co. Ltd)」は「滴滴出行(Didi)」と合弁会社を設立し、オンライン予約タクシーの運転手に自動車リースサービスを提供している。新型コロナウイルス収束後、オンライン予約タクシー会社の競争の敷居が次第に高くなり、主要なオンライン予約タクシープラットフォームと自動車メーカーが、この領域における競争の中心になると予想される。
(2)2020年、自動車メーカーのオンライン予約タクシー市場の参入計画は減速。
過去2年間で9つ以上の自動車メーカーが事業の枠を超え、オンライン予約タクシー市場に参入し、大量の資金を投下している。
これらメーカー系のオンライン予約タクシー企業は、市場の新規参入者として、ユーザー及び運転手に多額のインセンティブを継続的に投入し、大量のユーザーを獲得するために、短期間で複数都市への事業展開戦略を採用した。
突然発生した新型コロナウイルスにより、自動車メーカー系のオンライン予約タクシー事業の黒字化は大変長い時間を要すると予測されている。
Analysys社は、オンライン予約タクシー市場は参入障壁が高く、黒字化までに時間を要するなどの特徴から、2020年には自動車メーカー系のオンライン予約タクシー事業者は計画を見直し、低迷している景気を踏まえて、従来の業務を維持し、事業拡大を一時中止すると考えている。
(3)シャトルバスは次の焦点。
シャトルバスの運営は従来からある「滴滴出行(Didi)」、「首汽約車(Shouqi)」などの業界大手や、「PigyyBus」などのスタートアップ企業まで、複数の企業がこの分野でチャレンジしている。しかし、住民に浸透するまでに時間を要するため、シャトルバスの発展は依然として市場の初期段階である。新型コロナウイルス流行後、北京やフフホト市(呼和浩特市)などの都市では、業務を再開する企業のためにシャトルバスを提供し始めた。これは、シャトルバスの認知普及や習慣形成の絶好の機会となるだろう。
(4)交通業界のDXは、国家安全保障レベルの議論となり、政府の投資が増加すると予想。
新型コロナウイルスを経て、交通業界のDXはすでに国家安全保障レベルの議論に発展した。
新型コロナウイルス流行時、深セン市や南京市など10以上の都市が率先して公共交通機関、地下鉄、タクシー乗車時の実名登録システムを導入し、乗客情報の追跡を実現し、新型コロナウイルス流行の予防と管理の効率を効果的に改善し、コスト削減も実現した。
また、山東省、湖南省などでインターネットを利用して高速道路カード登録のチェックを行い、高速道路の円滑性を改善したことで物流の円滑性も向上した。
新型コロナウイルス収束後、政府は、バス、地下鉄、タクシー、高速道路などを含む多くの交通手段のDXを推進することが期待されている。
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