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【突撃!隣のCTO】 誰も考えなかったプロダクトを生んだ背景と「最短で偏差値60を目指す」根性論

2020年9月18日

レポート


株式会社オープンエイトCTO・石橋尚武さん

様々なCTOにキャリアや原体験、これからの野望などをインタビューする、techcareer magazine(テックキャリアマガジン)とのコラボレーション企画「突撃!隣のCTO」。

今回は 株式会社オープンエイトの執行役員CTO・石橋さんにお話を伺いました。プログラミングとの出会い、制作会社の立ち上げ、そして「自分たちで何かやりたい」という思いが起点となった、現在取り組んでいる前人未到のプロダクト「Video BRAIN」の開発に至るまでお話を伺いました。プロダクト作りに対する熱い姿勢に迫ります。


文系から理系への挑戦! 起業に至るまでの道

―エンジニアを志した原体験とキャリアの出発点を教えてください

私がインターネットと出会ったのは小学生の頃に遊んでいたオンラインゲームがきっかけでした。リアルな世界で接している親族や教師、そして同級生とのコミュニティとはまた異なり、インターネットの世界には「色々な人がいるな」と、知らない世界と繋がる凄さを感じました。その後東大文科二類に進学しましたが、大学1年生の頃、学問としての経済学が実社会に対してどのような応用ができるのかクリアなイメージを抱けず、自分には「経済学を突き詰めるのは難しい」と思いはじめました。その頃、IT系学生ベンチャーの会社にインターンとしてジョインしたことをきっかけに、2年の後半から学科を再選択できる制度を利用し、文系から電子情報学科の理系に移りました。研究室はネットワーク系で複数の大学間を跨いで結成されたWIDEプロジェクトに所属し、ネットワークのIPv6等の研究をしていました。

IT系学生ベンチャーの会社は、メンバー3人の小さな会社でした。そこで私はプログラマーの方々の仕事ぶりに憧れ、独学でプログラミングを始めました。それがエンジニアとしての出発点ですね。HTMLやCSSのマークアップから始めPHPを組み、ワードプレスやECキューブを通して知り合いのHPを作り、少額ながらも収益を得るようになり、そのままフリーランスとして活動するようになりました。卒業して大学院へと進学したものの、フリーランスとしての事業が軌道に乗り、更に大きな可能性に挑戦するために卒業ではなく起業の道を選択しました。そして創業したのが、「THE CLIP」です。

「作って終わり」では満足できない プロダクトをグロースさせる想い

―起業したTHE CLIPではどのようなサービスを展開していましたか?

THE CLIPは、インターン時代に知り合ったデザイナーと立ち上げた制作会社です。スタートアップから大企業まで幅広い取引を獲得し、新規事業向けのプロトタイプを高速で実現するサービスを軸に、デザインからプログラミングまでワンストップで提供していました。仕事も途切れることなく、売り上げも順調に伸びていました。しかしながら、制作会社という立場柄、どうしても「作って終わり」で、手掛けたサービスをグロースさせたり、中長期的にプロダクトに関わったりすることができません。

そこで受託だけではなく「自分たちで事業を育てていきたい」という思いから、いくつかの自社プロダクトをリリースするに至ります。例えば「DECOPOCHI(デコポチ)」という、お年玉袋を簡単に作れるサービスです。2013年の6月にクックパッドが開催した第4回「開発コンテスト24」で優勝することができました。しかしそれ以外のプロダクトは、資金的な体力から中長期的な成長が難しいという状況でした。まさにその頃、株式会社オープンエイトの代表取締役・高松や役員と出会い、経営領域の重要性に気づかされ、THE CLIPを株式会社オープンエイトに売却するとともに、CTOとしてオープンエイトにジョインすることになったのです。

■AIを取り込んだ概念的に新しいプロダクト「Video BRAIN」

―技術責任者として今取り組んでいること、これから取り組みたいことを教えてください

動画コンテンツの企画、制作、効果検証をワンストップで提供するインハウスAI動画編集クラウド「Video BRAIN」を提供しています。

一般的な動画制作は、どのような動画をするかを企画することから始まり、素材や情報を集め、加工し、専用の編集ツールを使える人が操作し、レンダリングし、ようやく完パケ(完全パッケージとして使える状態)になるという、複雑な工程や確認を要します。

「Video BRAIN」は、動画制作自体がデジタル化されているので、「動画制作を民主化」するようなプロダクトだと思っています。分かりやすく言えば、「誰でも表現したいものができる」サービスを目指しており、パワポでドキュメントを作成するイメージで動画を制作することができます。レンダリングはサーバーを介さずブラウザで行なっています。

プロが作る「どんな動画でも作成できる」ものではありませんが、どうやって動画を作るかわからない方たちには、機械学習がサポートすることによって、動画作成のハードルを下げる役割をしています。例えばAIがテロップと素材を組み合わせて提案してくれるなどです。テンプレートを用意して当てはめるだけで作れるものから、ギミックをいちから作り込んだ動画の作成も可能です。私は、CTOとして技術選定を行う一方で、技術的優位性のみを追求するのではなく、不確実性が高いことからアジリティー(敏捷性)の高い柔軟な開発に対応できるよう心がけています。

動画の制作にかかっていたコストを低くし、誰でも動画を制作することができ、動画だけにこだわらず、様々なコンテンツ制作のハードルを下げ、企業の情報発信をサポートしていきたいと考えています。

■様々な形式のコンテンツの製作工程をワンストップで提供したい

―経営陣の一員として今取り組んでること、これから取り組みたいことを教えてください

オープンエイトは、「世界を豊かにするコンテンツテクノロジーカンパニー」をビジョンに掲げるスタートアップです。動画に関しては5Gの追い風を受けて確実に伸びて行くところですが、それは動画に限った話ではありません。コンテンツ制作の工程では、企画、制作、配信、分析という4つの工程がありますが、それらを全方位的にワンストップで提供できるプロダクトやプラットフォームをテクノロジーを駆使して展開していくことを目指しています。第一歩として「Video BRAIN」があり、もう少し中長期的に考えればVRやARなどの最新技術を駆使し、様々なプラットフォームで4つの工程をワンストップで提供できるサービスをリリースしたいです。中長期的な観点で経営陣としてまた技術責任者として進めたいと思っています。

―現在の開発体制を教えてください

全社で90人ほど在籍していますが、その半分以上がプロダクトに関わる人員です。組織としては、UI/UXデザインからプロダクトを支えるチームと、テクノロジーでプロダクトを支えるチームの2部門があります。全社で各プロジェクトごとにスクラムで開発しています。また、シンガポールに機械学習の研究開発拠点を設けています。シンガポールは最先端技術の情報をキャッチアップしやすい環境にあります。アジア中からシンガポールに集まる優秀なエンジニアを採用できることもシンガポールに拠点を置く理由の1つです。現地のマネジメントは日本人ですが業務は全て英語で行なっています。日々のコミュニケーションの問題はありませんが、情報の非対称性が生じないよう、本社の情報を確実に伝えるためにオンラインで月一回の社員集会を開いています。

■求められるのは偶発的なコミュニケーションを取れる人材

―石橋さんが考える、これからあるべき技術者(エンジニア)像とは?

ひと昔前までは、エンジニアは”職人”と呼ばれていましたが、いまでは、プログラミング能力はもちろんのこと、コミュニケーション能力も同等に求められていると思います。グローバルな開発環境では、時間帯も合わせられず、そのうえコロナ禍では直接会って話すことができません。非同期のコミュニケーションの中で物事を伝えるのは容易ではないと思います。そこで偶発的なコミュニケーションを取れる人材が、今後重要になってくると思います。非同期コミュニケーションの中で大事なことは言語化能力で、一定のまとまりの文章に残す技術がまず第一に重要だと考えています。「それに加えて」という言葉で、偶発的なコミュニケーションを巻き起こせると更に強いと思っています。あえて脱線させたり、気になったことを聞いてみたり、きっかけを作って話をふくらませることも重要です。例えば、チャットを使うときに、自分から取り組んでいることを報告することで、発言の背景だけでなく、思想やパーソナリティなところまで話が広がったりします。コードで自己表現をできるだけではなく、自分が考えていること、思考の過程までを言語化する能力が重要になってきます。

■「最短で偏差値60を目指す」根性論

―石橋さんの「信念」「価値観」「大切にしていること」は?

フリーランスがキャリアのスタートだったということもあり、根性論ではありますが、ひとつ言語化して目標に置いているのが「最短で偏差値60を目指す」ことです。何かやると決めたら、偏差値60を目指してがむしゃらにやってみるのが大事だと思います。偏差値60ですと上位16%に入るので、二八(ニッパチ)の法則で言うと上位2割になれるのです。そこまで「頑張る」というのが信念です。しかし偏差値60で止めるということではありません。あえてやめるということではなく、どんなに嫌いなことや苦手なことでも、頑張れば60まではいけるだろうと思っています。それ以上続けるかどうかは、偏差値60の世界を知ってから判断すればいいと思っているからです。しかし組織のリーダーとして「がむしゃらに走れ」と言ってしまうと放任的になってしまうので、人材育成の観点で個人のスキルアップやある程度のダイバシティーで取り組むきっかけを作ることが重要だと思います。

■グローバルに通用するプロダクトを展開したい

―石橋さんの目標や野望を教えてください

まずは「Video BRAIN」を技術的に加速させるのが目下の目標です。まだまだ多くのプロダクトが日本で閉じています。「Video BRAIN」を皮切りにグローバルに通用するプロダクトを今後展開していきたいと思います。

―最後に読者へお知らせしたいことがあったら、教えてください

「Video BRAIN」が堅調に伸びてきていますが、それはまだ第一歩として考えています。「Video BRAIN」を含めたコンテンツテクノロジーを一緒にグロースできるエンジニアさんを募集しています。

―取材を終えて

考えを確実に言語化するコミュニケーション能力の高さに驚愕しました。そんな石橋さんの休日の過ごし方は本を読んだりお子さんを連れて公園に行ったりしているそうです。1日中寝ていることや、無意義に漫画をダラダラ読んだりすることもあるとのこと。「偏差値60」を信念に掲げながらON/OFFを切り替える姿勢に石橋さんの生き方の秘密があると思います。そして未来予想? の考えもユニークで余談としての会話も面白かったです。

石橋:「今後は脳からのインプットが主流になると思います。人間の知能がコピーできたりプログラムみたいにコピペができたりする。そんな伝達デバイスが出現したらワクワクしますね」知的好奇心を常に求める石橋さんらしさが伝わります。

プロフィール:石橋 尚武

東京大学大学院在学中よりフリーランスのエンジニアとして活動し、2013年にデザイン制作会社THE CLIPを創業。2016年オープンエイトにTHE CLIPを売却するとともに、オープンエイトのCTOとして参画。技術統括として東京とシンガポールの2拠点を束ね、OPEN8 CORE TECHNOLOGY開発の中枢を担う。テクノロジー開発を管掌。