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経団連x日本CTO協会「DX」ウェビナーを開催

2020年10月29日

イベント


新政権が「デジタル庁」創設に向けた動きを本格化する中、一般社団法人 日本経済団体連合会様(以下、経団連様)と一般社団法人 日本CTO協会(以下、日本CTO協会)は9月24日に、「DX」をテーマとしたウェビナーを開催いたしました。 

当イベントには経団連様や日本CTO協会に登録する会員様、合わせて400名を超える申し込みがあり、様々な業界・企業からの注目の高さを表していました。当日はDXのあり方等について、協創、大企業とスタートアップの関係性、人材育成など様々なテーマで議論が交わされ、本記事ではその内容をまとめてレポートしております。 

経団連様は、本年5月に提言「Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく~」を公表し、価値協創を軸としたDXによる産業構造・企業の変革の方向性を提示しました。また、昨年12月には日本CTO協会がDX推進に向けた経営ガイドライン「DX Criteria」を公表し、デジタル技術を企業が活用するための基準を体系的に示しました。 

基調講演 

Digital Transformation DX)~価値の協創で未来をひらく~」 

浦川 伸一 経団連DXTF座長/損害保険ジャパン 取締役専務執行役員 

COVID19においてデジタル化の遅れが浮き彫りになった現代の日本。悪しき前例主義の打倒、そしてDXを通じた社会の大転換によってpost/withコロナ時代を作っていくことが今必要とされていると思います。 

(講演資料より)

 

経団連はDXを単なるテクノロジーの変化ではなく、社会基盤や文化が大きく変わることだと捉えています。そして新たな社会Society 5.0(創造社会)は「デジタル革新(DX)と多様な人々の想像力・創造力の融合によって価値創造と課題解決を図り、自ら創造していく社会」と定義しています。豊かで暮らしやすい社会をいかに具体化するか?そのためには産業別の隔たりを超えて、生活者の価値創出を目的とした産業構成を考え直すべきだと思います。大企業を頂点とするピラミッド型の構造から、協創型のフラットな構造へと転換することが必要です。 

そして経団連は日本発「価値協創型DX」の実現を目指しています。米国、中国、EUなどそれぞれの地域でDXの取り組み方は異なります。そこで日本も日本ならではのDXのモデルを生み出し、グローバルでも通用するような取り組み方を実現できるチャンスだと思っています。 

私たちは「価値協創型DX」の実現に必要な要素5つとして「協創・経営・人材・組織・技術」を掲げています。「協創」とは単なる業務連携ではなく、多様な主体間で強みを補い合うことを指しており、鍵となる取り組みです。「経営」においては、DXについての理解と覚悟を持った経営者が変革を進めることが重要だと考えています。「人材」においては多様性の重要性を感じており、人材モデルを「起・承・転・結」の4種類に分けています。この多様性というテーマは「組織」にも関わっています。「出島」型組織を取り入れるなど新しい発想と変革を促すような組織構成が有効だと考えられます。最後の「技術」においては全て話すと長くなってしまいますが、最も着目して欲しいのは企業がAI-readyになるということです。AI機能を当たり前のように情報システムに取り込んで、データ駆動を進めていくことが今後必須となるでしょう。 

DXに関する大企業とベンチャーのあり方について」 

松岡 剛志 日本CTO協会 代表理事/レクター 代表取締役 

デジタル企業の圧倒的な強みとして「仮説検証速度」が非常に重要なポイントとなっています。不確実性の高い昨今のマーケットで生き残るためには仮説検証の回数の多さが必要となります。企画からリリースまで3ヶ月で行ったり、一日10回以上デプロイをすることで改善を頻繁に行ったり、そもそものプロダクトの種類が多かったり、と様々な観点から市場に挑戦する回数の多さがデジタル企業においては目立っています。 

しかし、仮説検証を素早く行うための体制づくりは多くの大企業ではあまり進んでいません。心理的安全性、ビッグデータの活用、顧客の観察、内製化などの取り組みは直接的な効果が見えづらく、踏み切れずにいる大企業は少なくないようです。一方、変化に素早く対応するスタートアップではアジャイルな仮説検証の体制作りにいち早く取り組み、差が出ているように思います。つまりDXとは単なるデジタル化ではなく、考え方や組織のあり方などを含めた総合的な組織変革といえるでしょう。そのためIT人材が数名入社しても、社内の持続的イノーベーションの圧に押され、組織全体を変えていくことは大変難しいと考えられます。 

ここでスタートアップ側の課題も考えてみましょう。日本は狭く、スタートアップが上場しやすい環境のため、日本に特化されがちになっています。例えば上場時平均時価総額は日本では133億円なのに対し、アメリカでは6億ドルという統計も出ています。そのため、最初からグローバルで勝負する、純粋な技術ドリブンのスタートアップが育ちにくいという課題があります。 

以上の背景を踏まえ、私が大企業の皆様に提言したいのはスタートアップのM&Aの推進です。圧倒的なアセットを持つが、デジタルの強くない大企業。デジタルに強く突破力はあるが、それ以外はまだこれからのスタートアップ。組織・文化ごと取り入れることでただの買収ではなく、お互いの強みを生かした仕組みが出来上がると思います。大企業には仮説検証を素早く行うためのノウハウが蓄積しデジタル改革が進む、そこで学んだ人材がベンチャー企業を立ち上げることで、挑戦者が増えるサイクルができます。このような協創的なエコシステムが拡大していくことが今後必要なのではないでしょうか。 

パネルディスカッション 

〔経団連様〕 

 浦川 伸一 経団連DXTF座長 損保ジャパン株式会社 取締役専務執行役員 

 堂上 研  経団連DXTF委員 博報堂ミライの事業室チームリーダービジネスデザインディレクター 

〔日本CTO協会〕 

 小野 和俊 日本CTO協会理事 株式会社クレディセゾン常務執行役員 CTO 

 松本 勇気 日本CTO協会理事 合同会社DMM.com CTO 

 広木 大地 日本CTO協会理事 株式会社レクター取締役 

パネルディスカッションでは視聴者の皆様からいただいた質問を元に、様々な議論が交わされました。パネリストの方の実体験に基づいたアドバイスなども多く見られました。 

Q:チーム、人材の出会い方が重要だと考えていますが、皆様が今の会社に雇われたときはどのような方法(出会い方)でしたか?また、DXを一緒に進めていけそうな中心メンバーをどのように見つけていこうと思いますか? 

松本:日本CTO協会の前身である「CTO会」のつながりで声をかけてもらい、今の会社へ。大企業変革のストーリーに興味があって入社を決意しました。今もリファラルを中心にやる気のある人材への呼びかけを積極的に行っていますが、ストーリーを丁寧に説明する大切さを実感しています。共感してくれる人が1人でもいれば、人はどんどん集まると思います。 

小野:私が経営していたベンチャーにM&Aの話(※)をいただいたのが、出会いのきっかけです。ただここで注意していただきたいのは、大企業のスタートアップのM&Aで関係性がうまくいかないパターンも多くあるということです。私の場合は幸運なことに、既存のルールで縛り付けることなく自由にさせてもらいました。しかし一部では、他のケースでは予定の管理が厳しかったり、いちいち細かい報告書を提出しないといけなかったり。大企業のやり方を押し付けてしまうと、ベンチャー型のやり方に慣れている人が嫌になってやめてしまうケースが多くあります。 

浦川氏(以下、浦川):自分が発信していないと相手は気づかないと思います。大切なのは化学反応。お互いに好奇心を持って結びあうのが重要ではないでしょうか。 

堂上氏(以下、堂上):内製化を自分たちだけでやろうとしてもなかなかうまくいきません。そのため、私はいろいろな外部の人に会うことを心がけています。そこで自分たちの情報を常にオープンにしています。割合としてはギブ、ギブ、ギブ、テイク、くらいの感じで。このようにオープンに話すことで、より魅力的な仲間ができると思います。ビジョンがないとどうしてもDXの実現や人集めが目的になってしまい、企業として目指す先が見えなくなってしまうので要注意です。 

Q企業の協創力を上げるにはどういう施策が必要でしょうか。技術と自社のビジネスを理解する人材がいる、DXの専門組織がある、というだけでは足りないように思います。 

浦川:エネルギーや勢いのある若手にどんどんミッションを与え、彼らを組織のドライバーに変えていくことが大切だと思います。熱意のある人に任せてみる、自由にやってみてもらうのはどうでしょうか。 

広木:私は違う観点でタスク・ダイバーシティについてお話しようと思います。タスク・ダイバーシティとは多様な人材が同じミッションのために集まることを指します。1つの職種ばかりを集めると、特定の能力を強化するにはいいが、サイロ化してしまうことがあります。対してタスクの多様性が集まると、競争のためのエネルギーに変換できることがあります。ダイバーシティというと女性の社会進出や人種について思い浮かべる人も多くいると思います。もちろんそれらも大切ですが、価値観やタスクの進め方などの多様性も重要ではないでしょうか?大企業ではまだタスク・ダイバーシティを取り入れている割合が少ないので、積極的に取り組んで欲しいですね。ただあまりにも価値観が違うと合わなくて、人がいなくなってしまうのでバランスを見極めることも重要ですね。 

松本:私は言語統一が必要だと思います。エンジニアの人からするとビジネスの人が使う用語がわからない、また逆のパターンも多くあるでしょう。ここできちんと数字に向き合い、会社の強みを理解し、どうしたら自社の事業がのびるのかという根本的なところの共通認識を作ることをお勧めします。そしてこれらの共通の目標を経営管理体系やKPIの目標などを通じて具体的なモジュールに分けることで、各パーツがするべきことが見えてきます。ファクトに向き合って自社がやるべきことを共通言語として抽出できるかどうかが鍵となるのではないでしょうか。 

総括 

松岡:今日は「協創」というテーマがお互いの基調講演でも取り上げられ、議論にも上がりましたが、正しいやり方などは誰もわかりません。しかし、目まぐるしく変化する社会において動かなければどんどんデジタル後進国となってしまいます。皆で挑戦し続け、高め合っていけるような環境が今後発展していくことを願っています。 

※ 2000年にベンチャー企業であるアプレッソの代表取締役に就任。エンジェル投資家から7億円の出資を得て、データ連携ソフト「DataSpider」を開発する。13年、「DataSpider」の代理店であり、データ連携ソフトを自社に持ちたいと考えていたセゾン情報システムズから資本業務提携の提案を受け、合意する。