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【突撃!隣のCTO】敬意と自律のあるエンジニア組織構築に挑戦

2020年12月7日

レポート


株式会社Showcase GigCTO・石亀 憲さん

様々なCTOにキャリアや原体験、これからの野望などをインタビューする、techcareer magazine(テックキャリアマガジン)とのコラボレーション企画「突撃!隣のCTO」。

今回は 株式会社Showcase Gigの取締役CTO・石亀さんにお話を伺いました。「手触り感のあるものがいい」と仰る石亀さんが、学生時代に開発したものから今取り組んでいる社会課題の解決までをお伺いしました。プログラミングの世界にのめり込むきっかけの一つになったスター・ウォーズ。そこにある課題を解決してきた石亀さんのキャリアに迫ります。


高校時代の素朴な疑問が、エンジニアを目指すきっかけに

ーエンジニアを志した原体験とキャリアの出発点を教えてください

記憶に残っているのは、高校生のとき友人から、掲示板などでコミュニケーションができると聞き、「そういう世界があるんだ」と知りました。それを自分も体験したいとインターネットに興味を持ちました。親にお願いしたところ、当時はあまりインターネットがわかっておらず、PC本体(マッキントッシュ*)だけ買ってくれたんですが、その中に、テキスト・画像などを配置し、ボタンをつけて他のカードに飛べる、ハイパーカードが入っていたんです。それを色々といじっているうちに、「どうやって動いているんだろう?」という疑問が浮かびました。

*Macintosh…1984年に初代機が発表されたApple社開発のPCブランド。現在では「Mac」と通称されることが多い。

ー「どうやって動いているんだろう?」という疑問から、プログラミングに興味を持ったのですか?

いえ、当時は疑問を持つことにとどまっていました。ただ、それまでゲームソフトを買ってきて遊ぶだけだったのが、ハイパーカードは自分で作ることができるという点が印象的で。「どうやって動いているんだろう?」がずっと頭の片隅に残っていました。おそらく、この疑問がその後プログラミングの世界に入っていく原体験かなと思っています。

スター・ウォーズのボトルキャップがマッチングサイト構築のきっかけに

ープログラミングやエンジニアということを意識するようになったのはいつごろですか?

大学生の時に自分でもサービスを作るようになりました。その中で、その情報を分かりやすく集約したくてHTMLを書いたりしたんですが、CGIを見たときに「なんだこの動きは?」とわからないことが出てきて、その辺りからプログラミングというものにのめり込んでいきました。

ー具体的にどのようなサービスをつくって、その感覚になったのか教えてください

当時、ペプシのおまけでついてくるスター・ウォーズのボトルキャップがあったんですがそれをコレクションしたくて集めていました。ただどうしても同じキャラが被ったりしてなかなか集まらなかったので、それを交換するマッチングサービスのようなものを立ち上げたんです。当時は、相手が送付してくれることを担保するまでの仕組みは作れていなかったので、マッチングした後は駅で会って物々交換をしていました。マッチングまではデジタル、交換は手渡しとアナログでした。

ー自分自身の課題をサービス化したんですね。何か課題はあったのですか?

私は無事全種類をコンプリートできたのですが、まだ集めきれていない人たちから、続々と欲しいボトルキャップの交換依頼が来たんです。どうすれば自分以外の人たちも交換できるかを考えて、プログラミングされた仕組みを作るしかないという結論に至りました。当時の自分では、頭で描いている機能を具現化できないこともありましたが、こういった経験がプログラミングやエンジニアという職業を意識するきっかけになったと思います。

「身近なサービスを作りたい」とベンチャーに飛び込むものの、1年で開発会社を起業

ー大学卒業後はどのような会社に就職されたのですか?

当時、いわゆるガラケーが主流で、iモード公式サイトなどを開発する会社に入社しました。携帯から天気予報やニュースの情報を取得するようになり始めた時代で、そんな普段使う携帯のサービスを自分でも作りたいなと思い、ベンチャーの門を叩きました。

ー大手のWeb会社、携帯電話キャリアの会社に就職という考えはなかったのですか?

当時、大手のWeb系企業はPCサービスが中心だったため、自分がやりたい携帯サービスではありませんでした。携帯電話キャリアについては、iモード公式サイトなどの個別サービスを開発しているわけではなく、そのプラットフォーム自体を運営しているものでした。【具体的なサービスを創る】という自分のやりたいことができなかったかなと今では思います。当時は、携帯のサービスを開発したい→開発している企業がある→その会社に応募したというシンプルなアプローチでした。

ー最初の会社ではどのような仕事をしていたのか教えてください

プログラミングがしたかったのですが、実際にはプランナーという位置づけでした。ものづくりそのものでなく、受託開発の管理だったり、どんなサービスを作るのかを考えていましたね。今の職種でいえば、プロダクトマネージャー、ディレクター、デザイナーなどに近く、「全体を見る仕事」でした。コードを書くことはなく、パワーポイントやエクセルで資料をつくることが非常に多かったです。当時やりたかった仕事ではないのですが、ドキュメンテーション作成や企画書作りを通して、全体を見る力が養われたので、今考えると自分のキャリアにとって非常にいい経験になりました。とはいえ、「プログラミングがしたい。開発したい。」という想いは変わらなかったので、独立を決意しました。

ー独立当初はいかがでしたか?

就職した会社の同僚と受託開発の会社を立ち上げました。携帯のサイトが活況を迎えており、iモードの公式サイトなどを開発していました。それから、キャリアごとに異なっていた絵文字を変換させる等の開発もしていましたね。それらを数多く開発していく過程で、スキルアップができたなと感じています。全員がプログラマー、ディレクター、デザイナーと、マルチロールをしている環境でした。

企業のSNS活用を確信し、mixiと合弁事業を立ち上げ

ーどのように事業を展開していたのでしょうか?

当時、日本のSNSとしてはmixiやGREEが主流で、ユーザーは個人での利用がほとんどでした。一方で海外のSNS、例えばFacebookに目を向けてみると企業もユーザーとして利用している状況だったので、「日本でも企業がSNSを使ってビジネスを加速させることになる」と予測しました。そこで、mixiに企業向けのサービスをやらないかと提案したんです。その時に、Showcase Gigの共同創業者の新田と出会い、企業向けのサービスを立ち上げるための合弁事業を立ち上げました。

ーそこから、なぜ創業に至ったのですか?

やりたかったことは、オンラインとオフラインの融合でした。当時、店舗への集客を目的とした場合、まだまだオンライン側での集客はメジャーではなく、テレビ広告などマスメディアが必要でした。一方、mixiは大きな企業とタイアップをして、オンライン上にいるmixi内のユーザーをオフラインに送客する企画をしていました。例えば、SNS上で友達同士がギフトを送ることができるmixi Xmasというサービスは、当時新田のチームが手がけており、ローソンのからあげクンをギフトとして友達に送ることができました。受け取った友人は店舗でからあげクンを手にできる。結果的に、オンラインからオフラインに送客ができていました。これは一例ですが、そういった購買体験の思想に共感したことがきっかけとなり、日常の消費をテクノロジーで便利にしたいという想いで新田とShowcase Gigを立ち上げるに至りました。

ーmixi内でやるという選択肢はなかったのですか?

当然、mixiでやることは模索しましたが、やはり新しい会社でやる方が自由度が高いと考えていました。加えて、僕がやるべき仕事はここではなく外の世界に転がっていると。それにすでに起業しており、新たな起業にそこまでリスクを感じていませんでした。

「人手不足」という大きな社会課題解決のために、CTOとして成功確率を高めたい

ーShowcase Gigを立ち上げた後、CTOとして取り組んできたことがあれば教えてください

お客様自身のスマートフォンで注文するテーブルオーダーシステムや、マルチペイメントに対応した次世代タッチパネル型注文決済端末、そしてテイクアウトオーダーシステムなど飲食店のDXソリューションを提供するモバイルオーダープラットフォーム(同社のプロダクトO:der)の開発に注力してきました。特に、初期は開発現場にかなり時間を割いていました。社内での私の立ち位置は「なんでも屋」でしたね。社内の情報システムなども担当しており、「Wi-Fiがつながらないんですけど…」といった相談も解決してきました(笑)。また、当社のシステムをご利用する店舗のWi-Fi整備は、我々のサービスを提供するための初期準備段階なのですが、そういったことも手掛けていました。今は会社の成長とともにエンジニア組織が大きくなってきたので、「技術組織をどう拡大するべきか?」「カルチャーはどうするのか?」という課題があり組織づくりに時間を割いています。

ーエンジニア組織が大きくなっていく中で、苦労したことはありますか?

組織が大きくなっていく過程で、時として自分自身がボトルネックになってしまうことがありました。それを回避するために、自分自身の仕事を、人に任せるようにしていました。

ー「人に任せる」ために、具体的に工夫されたことはありますか?

自分の仕事をカテゴライズするために、いろんな仕事の職種のジョブディスクリプションをを集めてみました。自分がやっている仕事をある職種に当てはめられないかを考えていました。例えば、先程も話した情報システムの仕事は、“情報システム担当”へ移せるなど。また、組織を拡大するためには“マネージャー”が必要だと考え、“エンジニアリングマネージャー”という採用枠を設けました。手探りではありますが、そうして組織の拡大に取り組んでいます。

ー現在はどのくらいの開発規模ですか?

総勢40名程の開発体制になっています。バックエンドが一番多いですが、フロントエンド、インフラ、QA、デザイナー、プロダクトマネージャ、エンジニアマネージャーと幅広い職種の人が活躍してくれています。

ー経営者/技術者の立場で、今後取り組みたいことを教えてください

経営者と技術者、それぞれの立場でやりたいことは繋がっています。モバイルオーダーという仕組みをさらに広げることです。店舗のデジタル化・自動化をより当たり前にしたいと思っています。新型コロナウイルス感染症の拡大で、新たな課題に直面していますが、飲食店のオペレーション効率化や適切な人員配置による店舗運営は、ますます大きな社会課題と言えます。モバイルオーダーを導入することで、店舗側は注文受付や会計業務などを効率化し、その分を接客やおもてなしへの注力や商品品質へ還元するなどといった事例が増えており、店舗側と利用者の双方にメリットをもたらしています。これまでの導入例から見ても、便利になることは明らかですが、従来の商売のあり方や既存のオペレーションなど様々な事情があり、急にデジタル化することは容易ではありません。その一方で、マクドナルドやスターバックスといったチェーン店もデジタル化に乗り出しており、我々が目指している世界に少しずつ近づいていると感じています。コロナの影響もあって、飲食店もデジタル化に積極的に取り組みつつあるので、我々はそこに寄り添いながら後押しができればと考えています。

そのために、経営者/技術者としてまず社内に「技術の力で消費者の生活を変えることができる」という思想を浸透させ、組織としての挑戦回数を増やしたいと考えています。組織のパフォーマンスを上げるためには個人ではなく、自分たちの組織がどうあるべきかを問うことが大切です。また、先程申したように、デジタル化は一気に進められない背景とも向き合いながら、どのようにデジタル化するのか道筋を考えることも、経営者/技術者として取り組みたいです。

個人スキルのみならず、チームワークがこれからのエンジニアには必須

ー石亀さんが考える、これからあるべき技術者(エンジニア)像とは?

エンジニアとして、【スキルセット】や【プロダクトに向かう姿勢】はもちろん大切ですが、一番重要なことは、【チームワーク】だと思います。以前と異なり、初期フェーズ以外で1人で作れるサービスは世の中にあまりないと考えています。サービスとしての規模が拡大し、複雑性も高まってきているのでチームでプロダクトを作ることが前提です。そうしたときに、それぞれが得意な分野を活かして、お互いが強みを補完しながら作っていくことになりますね。そう考えると、いいサービスやプロダクトが作れるかどうかはチームワークに依存すると考えています。私は、サッカーが好きなのですが、クリスティアーノ・ロナウドやメッシといった傑出した選手は個人技もずば抜けていますが、味方にパスを出したりアシストするなど、チーム全体で勝利に貢献するプレイが多い印象です。それゆえ、レアルマドリードやバルセロナが強いチームになっているのだと思います。個人技が優れているだけでは勝てないはずです。

ーチームワークを養うために、重要となるスキルがあれば教えてください

スキルではないですが、【敬意(リスペクト)】だと思っています。命令することで動くのではなく、相手に敬意を示してお互いが信頼をした上で全員が自律的に動いたときに、人の能力は最も発揮されると考えています。これは、新型コロナでリモートワークなどが加速したことでより鮮明になっているはずです。お互いが自律し、信頼してこそのリモートワークだと思うので。

ー石亀さんが大事にしている信念や価値観はありますか?

これも同じく敬意です。仕事において、【命令】が好きではないです。目標をはっきりと決めるために、命令という手段があることも、必要なことはわかっています。ただ、達成するための道は様々だと思っています。できるならば、自分でその道を見つけて欲しい。例えば、コードの書き方も様々あり、仕事の途中で相談しながら変わっていくことはいいのですが、最初の一歩は自分自身で見つけることを大事にしています。その前提には、敬意・自律ある。それが、自分自身が作りたい組織であると思っています。

ーそのような考え方に至る経験があったのでしょうか?

これまで、個人の能力は申し分ないが、チーム全体で見たときの生産性が低いということがありました。具体的には、お互いが遠慮をしてしまったり、逆に押し付け合ったりしてしまうことで、1+1=2以下になってしまうことがありました。本来、ケミストリーがあれば、1+1が3にも10にもなるはずなんですよ。その時の経験から、先程のような考え方に至ったのではないかと思います。

自由になる一つの手段として、起業する人を支援したい

ー石亀さんご自身の目標や野望はありますか?

私自身、2002年から起業をしています。その経験からも、会社を作る人をもっと増やすお手伝いをしたいです。これまで、「起業したいんです。」という相談を多く頂いたものの、実際に起業に至った人はほんの一握りです。となると、もっと起業の支援ができるのではないかなと。より多くの人が起業することで、自律的に自由に働けたらと思っています。自由に働く方法は様々ですが、起業はその中の一つです。企業に在籍しながら会社を持つことも可能です。私自身が、様々な人の起業を応援することで新しいサービスが続々と登場し、日本に活力が生まれたら嬉しいです。

―最後に読者へお知らせしたいことがあったら、教えてください

現在、弊社は拡大フェーズです。プロダクトも複数ライン存在し、あらゆる職種で募集しています。モバイルオーダー(O:der)で、飲食事業者のみなさんと寄り添いながら社会課題を本気で解決をしようとしているのは日本で我々くらいだと思っています。一緒にこれからの「あたりまえ」を作っていただける方を募集しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

取材を終えて

リモートワークやジョブ型雇用といった言葉が一般的になっているように、働き方が大きく変わっています。その中で、「命令でなく、敬意を持って自律を促す」ということはこれからの働き方においても鍵となるのではないでしょうか。石亀さんのようなCTOの元で経験を積んだら、エンジニアとして、社会人として大きく成長するであろうなと強く感じました。石亀さんが創るプロダクトにも組織にも今後目が離せません。

プロフィール:石亀 憲(いしがめ あきら)

株式会社Showcase Gig 取締役 CTO。大学卒業後、システム会社を立ち上げ、エンジニアとしてモバイルを中心とした各種開発業務に携わったのち、株式会社ミクシィとのジョイントベンチャー、株式会社tuthを設立、副社長に就任。mixi、Facebook、Twitterを横断したマーケティングプラットフォーム「StageSync」やソーシャル広告ソリューション「エキスパンドバナー」などを開発。2012年、株式会社Showcase Gigを共同設立。