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【突撃!隣のCTO】本質を見抜き、老舗企業のDXを推進

2021年1月29日

レポート


株式会社ハマヤ CTO・若井信一郎さん

様々なCTOにキャリアや原体験、これからの野望などをインタビューする、techcareer magazine(テックキャリアマガジン)とのコラボレーション企画「突撃!隣のCTO」。

今回は株式会社ハマヤCTO若井信一郎さんにお話をうかがいました。テクノロジーの魅力にとりつかれ、数々のイベントへの登壇を皮切りに、社会へ貢献し続ける若井さんの過去、現在、そして将来のビジョンに迫ります。


■イベントの登壇により、得る情報の質・量が変わる

―エンジニアを志した原体験を教えてください

実は元々エンジニアになろうとは思っていませんでした。数学が得意だったことと、デジタル関係に強い方が将来的に有利だという考えから、大学は理系を選択し、C言語の勉強をしたり、ハードウェアを触ったりしていました。就活時は、志の高い人と働けるかどうかという軸で企業を探していたので、職種にこだわりはありませんでした。デジタルマーケティングのベンチャー企業に内定を頂いた時に、大学時代の経験からエンジニアならその企業に貢献ができると考え、エンジニアの世界に入りました。

―新卒で入社した会社ではどんなことをされていたのですか?

会社が「挑戦しよう」というカルチャーだったので、エンジニアの仕事はもちろんのこと、幅広い職種を経験しました。様々な仕事をしていくうちに、テクノロジーの魅力に取り憑かれていきました。最年少でエンジニアリーダーを任されたこともあり、様々な技術の勉強がしたいと感じ、勉強会やイベントに参加するようになりました。参加していく過程で勉強会で得られる情報は仕事に活かせることがわかったので、情報収集にフォーカスするようになりました。ある時、最も情報が入ってくるのはイベントの主催者や登壇をする人だと気づき、自分も登壇するようになりました。

―登壇する経緯や登壇してみた感想を教えてください

参加したイベントのオフ会などで、登壇者にお話を伺うなどして、地道にコミュニティを広げていきました。次第に、「イベントに登壇してみないか」と声をかけていただくことが増え、イベントに参加するのと登壇するのとでは、得られる情報の質や量が異なることに気が付きました。具体的に説明すると、イベント参加者に向けて情報を発信する際は、伝わりやすいように情報が噛み砕かれ、簡易化されています。しかし登壇者同士であれば、フィルターを介さずにそのままの情報が入ってきます。最初はただ楽しくてイベントに関わっていましたが、イベントに関わることでどのようなものが得られるのかをイメージするようになりました。

そうして登壇しているうちに、関西最大級のフロントエンドコミュニティに入りました。さらに自分でイベントを作るようになり、200人規模のハッカソンの主催をしたり、エンジニアのコミュニティの立ち上げをしたりし、1年で10~20の立ち上げ/運営に関わりました。具体的には行政主催のセミナーやバックエンド寄りのハンズオンイベント、OSS関連のカンファレンスなどです。最近は全国で5,000人規模のRPAコミュニティの主要メンバーとなり登壇をしています。

■50年の老舗企業にデジタルの風を

―現職に関してですが、元々CTOとしてジョインすることは決まっていたのでしょうか?

ハマヤは50年の、歴史ある手芸屋さんです。

初めは社外プロジェクトとして関わっていたのですが、プロジェクトを進めていくうちに、「部長として一緒に働かないか」とオファーを受けました。当時のハマヤの状況は、ボロボロのアナログ会社でした(笑)。明らかにシステムで解決できる仕事を、人の手でやっているという状態です。私が部長としてハマヤにジョインすることで、当時の状況を打破できればと思い、入社を決めました。

―具体的にハマヤではどのような取り組みをされていたのでしょうか?

ハマヤではDX化を行っていました。老舗企業に多いことなのですが、現在の業務に手一杯で新しいことに手が出せない状況でした。そこで、新しい施策に費やす時間を作るべく、コストをかけずにCRMやBIなど、50の業務アプリやシステムを開発し、合計5760時間の空きを創出しました。

そこで次に出てきた課題が、“どのようにして利益を出すか” です。前述の社内でのDX化を成功事例とし、社外のDX化コンサルをして利益を得ようということになりました。しかし営業にかける予算はなかったため、イベントに登壇することで実績を示し、多くの参加者から声をかけていただくようになりました。そして結果的に売上が150%も上昇し、会社として利益を出すことができました。

―50のアプリやシステムを開発したとのことですが、社内にエンジニアはいたのですか?

いませんでした。開発も初めは私1人でやっていました。社内のメンバーにプログラミングを教えるところからスタートし、一緒に開発していました。とはいえ社員の平均年齢は50歳(笑)。専務や部長、執行役員たちは比較的若かったので、役員陣をメインにプログラミングを教えていましたね。

―若い人でも挫折してしまうイメージがありますが、プログラミングはすぐに習得できるものなのでしょうか?

きちんとサポートをすればプログラミングは習得できると思っています。ネットにあるプログラミング教材はわかりにくく、初心者向けではないと感じています。それをサポートし、プログラミングとエンジニアリングを身につける方法を教えてあげれば、誰でもエンジニアになれるはずです。しかし、挫折する人が存在しているのが現状なので、それを救いたいという思いから、個人でエンジニアの教育やメンターという社外活動をしています。

―技術責任者として現在取り組んでいること、これから取り組みたいことを教えてください

現在もDXの推進に取り組んでいます。個人としても会社としても将来やりたいことは、人の感性が重視される世の中をつくることです。今後テクノロジーの進化で、どんどん人の定常業務がなくなると予想されます。そうなった時に人間ができるのは感性(クリエイティビティ)にまつわる業務です。しかしクリエイティブなアイデアを思いついても、それを実践してプロモーションしている人だけに焦点があたっているのが現状です。クリエイティブなアイデアを思いつくこと自体がいいことだよね、という世の中にしたいです。

■デジタル恐怖症を克服にするには、デジタルでの成功が必須

―アナログ企業だったハマヤをDX化する過程でどのような課題がありましたか?

課題は2つありました。まず1つ目が、弊社は50年続く慣習があるので急激に変化を起こすことはできません。ほとんどの社員がITを恐れていました(笑)。不安や恐怖を払拭することと、ITに対する理解を深め、良さを教えてあげることが課題でした。ITに対して恐れを抱いている人がいる環境で、どのようにDX化していくのかというのが大きな壁でした。もちろん最初からDX化に賛成の社員もいて、「データをクラウド化してほしい」などの意見も出ていました。

2つ目の課題は、DX化したことでその業務がなくなった人への対応です。心理的障壁を取り除くため、「会社がこういう未来に向かっているのでこういう改善をしています」と説明をしました。新しい仕事を与えるところまでの構築に時間を費やしました。

不安の払拭は重要ですが、全てを払拭することはできません。まずは小さいシステムを作り、結果を出すことでDX化が役に立っていると実感してもらう必要があります。

―DX化を図り、ITを怖がっていた社員の心境は変わりましたか?

社員全員がDX化に賛成してくれたわけではありませんが、ITの良さを理解してくれた社員は、「こんなアプリを作ってほしい」など、前向きな意見が出るようになりました。

―エンジニアリング知識だけでなく、ビジネス面の知識はもとからついていたのですか?

元々知識はありませんでした。ハマヤを改善していく過程で、知識とノウハウが必要だと気づき、ファイナンシャルやマーケティング、コンサルティングの本や記事をたくさん読みました。記事を読んで、実際に経営者に話を聞きに行くこともありました。そうしているうちに、次第に身についていきましたね。

■本質を見抜き、最適な方法で問題解決をする

―経営陣の一員として今取り組んでること、これから取り組みたいことを教えてください

会社のビジョンや方針に沿って、いかに利益を伸ばすかが直近の課題になっているので、それを実現する方法を日々模索しています。そのためには本質を見極めることが大事だと考えています。

ある物事に取り組んだ時に、自分たちが目指す未来に直結するかを考えて行動しています。直結しない物事に投資はしたくありませんが、やってみないとわからないというのも事実です。予想ができない物事には積極的にチャレンジしています。

―若井さんが考えるこれからあるべき技術者(エンジニア)像はありますか?

「技術は手段」を心に刻むことができるエンジニアです。私自身、技術がとても好きで新しい技術を試したりもしますが、価値が出るのは技術ではなく、課題解決の部分だと思っています。例えば、お客様に「ある課題を解決してほしいからこんなサービスを開発してほしい」と言われたとします。お客様に言われるがまま開発するのではなく、資金調達することで問題が解決するのであれば、新しくサービスを開発する必要はありませんよね。つまり、ある課題を解決したことで大きな価値が生まれるのあれば、手段はシステム開発でなくたって良いということです。課題に対し技術はあくまでもひとつの手段。その思考で、課題解決の道筋を描けることが大切だと思います。

―「信念」「価値観」「大切にしていること」を教えてください

「本質を貫く」が私の信念です。無駄な作業はできるだけ省きたいと考えています。例えば、お客さんに「ノートアプリの開発がしたい」という相談を受けたとして、そもそもなぜノートアプリが必要なのか。自分が使用するという理由なのであれば、Evernoteを使えば良いですよね(笑)。しかし、そういう依頼が往々にしてあって、Evernoteと同じアプリを1年かけてつくる企業もあります。そういう無駄をなくしていきたいです。

―若井さんご自身のこれからの目標や野望を教えてください

取り組みたいことと重複しますが、会社としても個人としても、人の感性(クリエイティビティ)を大切にする世の中を作っていきたいです。まずはDXの推進を図り、その後クリエイティビティをどのように活かすかという取り組みをしたいです。何をやるかというより、誰とやるかを大切にしていて、やることが変わってもその人と行動を共にしていれば、未来やビジョンが描けると思っています。

―最後に読者へお知らせしたいことがあったら、教えてください

僕たちは中小企業や老舗企業のDXを推進し、最終的には人の感性(クリエイティビティ)を大切にする世の中を作っていきたいと考えております。

ただ単にそういう世の中を作りたいだけではなく、誰と達成するか(チーム)を重視しています。

そして、それを実現するには未知の領域でのITの力が必要になってくるかと思いますので、こちらの記事を読み、少しでも興味が湧いた方(特にエンジニア/デザイナー)はお気軽にご連絡ください。

■取材を終えて

「もっと技術を勉強したい」という思いを原動力に、数々のイベントへの参加や、コミュニティの立ち上げをされたことに感服いたしました。また、50年の歴史ある企業のDX化に成功したことは若井さんの大きな業績であり、日本の未来を変える大きな1歩です。若井さんのように「何事も挑戦」というモチベーションで様々な社会貢献活動をしている人が、日本の未来を変えていくのではないかと強く感じました。人の感性を大切にする世の中をつくるという野望も、若井さんなら叶えてくれると思うとワクワクします。

プロフィール:若井 信一郎

デジタルマーケティングのベンチャー会社に新卒で入社。数々の技術系イベントへの登壇やコミュニティの立ち上げに携わる。株式会社ハマヤから部長としてオファーを受け入社し、社内のDX化を成功させる。その後、執行役員CTO兼CIOに就任。現在では数社の技術顧問/社外CTOとしても活動。