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【突撃!隣のCTO】スモールビジネスの変革に圧倒的コミット

2021年10月18日

レポート


freee株式会社CTO・横路隆さん

様々なCTOにキャリアや原体験、これからの野望などをインタビューする、techcareer magazine(テックキャリアマガジン)とのコラボレーション企画「突撃!隣のCTO」。

今回はfreee株式会社CTO横路隆さんにお話を伺いました。設立からわずか9年にして、時価総額4,800億円企業に躍り出たfreee株式会社(※2021年9月24日時点)。そんな “日本で最も伸びている企業” の1つと言っても過言ではない同社の成長を支える、横路さんのバックグラウンドや今後のビジョンに迫りました。


■電子音楽がものづくりの楽しさを知るきっかけに

―エンジニアを志した原体験を教えてください

中学生時代に電子音楽に目覚めたのがきっかけです。小さい頃からものの仕組みに対する好奇心が強かったこともあり、コンピューターで音を作ることに興味を持ちました。当時はちょうどテクノミュージックやハウスミュージックが日本に入ってきた時期でしたね。最初はハードウェアのシンセサイザーで音を作っていたのですが、その後はiMacを買ってもらい、Logicというアプリケーションを使うようになりました。学生時代は音楽にどっぷりはまっていましたね。パソコンで何かを作るという意味では、これが原体験かなと思っています。

―音楽制作ではプログラミングに触れることはなかったのですか?

アプリケーションを使って音を作っていただけなので、プログラミングをすることはありませんでした。初めて本格的にプログラミングに触れたのは、大学時代のアルバイトです。ものづくりに興味があったのは事実ですが、始めた理由は他のアルバイトに比べて稼げると聞いたためです。そんな理由でしたが、始めてみるとプログラミングの面白さを知り、大学生時代は音楽とプログラミングの2本立ての生活を送っていましたね。

―アルバイトではどのようなサービスを開発したのですか?

主に、ビジネスを効率化するBtoBツールの開発に携わっていました。その中でも特に思い出に残っているのが、銀行向けの融資支援システムの開発ですね。地方銀行が融資を実施する際は土地を担保に取ることが多いのですが、地方の土地は値段がつかないので担保として成立しないことがあります。ちょうどその当時、政府主導のもとそういった課題を解決するべく、価値の流動性が高い動産を担保として扱おうとする流れが生まれました。例えば、牧場の経営者であれば、牛などの家畜を担保として扱うことが出来るといった具合です。このような動産の価値を算定し、融資の際に役立てるシステムを作っていました。

また、アルバイトではないのですが、実家が営むお菓子屋向けに販売管理システムを作ったこともあります。帰省中に親の悩みを聞いて、「システムで解決できるかも」と思ったので、簡単なツールを作ってみました。親はとても喜んでくれて5万円もくれたんです。高校生の時は毎月のお小遣いが5千円程度だったので、こんなにもらえるんだとびっくりしました(笑)。この2つの出来事が、スモールビジネスに対していかに技術が役に立つかを感じた実体験の一つになっています。

■リーマン・ショックの翌年に就職:崖から突き落とされて成長する

―大学卒業後はどのようなキャリアをスタートしたのでしょうか?

大学卒業後はソニーへ入社しました。入社理由は、音楽への興味と、製品を上流から下流まで一貫して自社で作っている点に興味を持ったからです。主な担当業務は、C言語を用いたカメラのイメージングソフトウェアの開発です。ざっくり言うと、動画や画像を撮ったり再生したりの制御に携わっていました。

―アルバイト時代の開発と相当なギャップがあったんじゃないですか?

結構ありましたね。そもそも仕事でC言語に触れたこともなかったですし、イベントドリブンなアーキテクチャ設計などは大きなギャップでした。アルバイト時代はビジネスロジックの積み上げでプログラミングをしていましたが、カメラにおいては様々なイベントが同時進行で発生します。例えば、写真を書き込んでいる最中に撮影ボタンを押した時に、前の写真の書き込みが完了しているかどうかといった割り込みが発生します。当初は、これらを考えながら開発することにかなり苦労しましたね。

―そういった開発が楽しくてどんどんプログラミングにのめり込んでいったという感じですか?

そうですね。ソニーに入社したタイミングで仕事でコードを書いていく覚悟が決まりました。というのも、私が新卒で入社した年の前年にリーマン・ショックが発生し、ソニーでも業務委託の大幅な人員削減が行われました。人員削減はするものの全体の業務量は変わらないので、入社してすぐ30万行のコードを任されたんです(笑)。崖から突き落とされた感覚で大変ではありましたが、あの経験で大きく成長できたと思います。

■現代表の佐々木さんとの出会い:2日でfreeeの原型となるプロトタイプを完成

―その後どのようなきっかけでfreeeの設立に至ったのでしょうか?

現代表の佐々木との出会いがきっかけですね。佐々木とはもともと知り合いだったわけではなく、知人伝いで「おもしろいアイディアがあって、一緒に形に出来るエンジニアを探している人がいる」という話を聞いたので会ってみることにしました。それが2012年4月です。実際に佐々木に会って話を聞いてみるとおもしろそうだったので、翌月のゴールデンウィークに2日間かけてfreeeの原型となるプロトタイプを作成してみました。すると、「これだったらいけそう」と思えるものが作れたんです。当時はソニーを辞めようと思っていたわけではないのですが、「おもしろいことがあればチャレンジしてみたい」という想いがあったので、2ヶ月後の2012年7月にfreee株式会社を設立することにしました。

―佐々木さんのどういったところに惹かれたのでしょうか?

最初は、お互いの実家がスモールビジネスをやっているなどの共通点があり意気投合したのですが、一番惹かれたポイントは彼の “コミット力” ですね。「1ヶ月でプログラミングが出来るようになってくる」と言った佐々木は、本当に1ヶ月後にRuby on Railsでプログラムが書けるようになってきたんです。もともと彼は、Googleでデータサイエンティストとして働いていたので、多少は情報系の知識はありました。しかし、1ヶ月でプログラミングを習得したことには驚きましたし、「この人なら信用できる」と思えたんです。

■採算を度外視してでも事業の幅を広げたい

―技術責任者、経営陣としてこれから取り組みたいことを教えてください

一番考えていることは、3年5年10年のスパンでどのように会社を成長させていくかですね。弊社はプロダクトカンパニーなので、プロダクトでビジョンを達成するにはどうすべきか常に思考を巡らせています。「5年10年後にプロダクトで日本がどう変わっているのか?その場合当社の数字はどのように積み上がっていくのか?」という命題に対し、「技術でどう解決していくか?技術でどれだけレバレッジできるのか?」といったことを考えては議論をしています。

―現在のビジョンの達成度はどれくらいですか?

まだまだですね。当社が実現したい世界に対し、他にも作りたいプロダクトがたくさんあります。そのため、エンジニアをどんどん採用してプロダクトを作っていくつもりです。また、世の中の顕在的なニーズばかりではなく潜在的なニーズにもアプローチできるよう、2年ほど前から仮説検証のスピードを早められる基盤づくりを行っています。“早く作って早く捨てるサイクル” のスピードを加速化させていくということですね。この分野での私の主にな役割は、 “実行のサポート” と “未来を描く” の2つです。

― “基盤づくり” とは具体的にどのような業務が挙げられるのでしょうか?

システムのインフラ構築・整備はもちろん、プロダクト間のナレッジシェアなどです。弊社には自社で作ったプロダクトだけでなく、M&Aによって得たものなど様々なプロダクトがあります。このような状況下で各プロダクトを分断して開発するのは、とても非効率ですよね。そこでそれぞれに、ライブラリなどの “共通の武器” を配ることで事業成長を加速させられると考えています。

―今後新しく踏み込んでいきたい領域があれば教えてください

スモールビジネスにおけるフロントオフィスの事業領域を伸ばしていきたいですね。今まではバックオフィス領域のプロダクトが中心だったのですが、最近はスマート受発注やプロジェクト管理などの収益管理領域に力を入れ始めました。経営者が売上や収益を予測する時はフロントオフィスのツールが役立つので、それらが簡単に見られるツールを開発しています。一方で、フロントオフィス領域のプロダクトはスモールビジネスにおいても、業種業態毎に業務フローが多様化しています。そのため、汎用的なプロダクトを作る難易度が高く、また中途半端なものを作ってしまうとどの企業にも刺さりづらくなりますし、細かくカスタマイズ可能なものにしても自分たちでは設定しきれなくなる、といった状況に陥ってしまいます。しかし、だからといってこの事業領域から退くつもりは全くなく、強いビジョンを持って取り組みたいと思っています。

■収益の基盤を作りスモールビジネスへ還元

―横路さん個人のこれからの目標や野望はありますか?

スモールビジネスをより良いものにしたいと思っています。一般的なSaaSビジネスでは、まずはニッチな領域から攻めてその後に大きなセグメントを取りに行くのが主流です。しかしそうすると、最終的にニッチな領域への踏み込みがどうしても浅くなってしまいます。当社のビジョンは “スモールビジネスを世界の主役にすること” なので、コアビジネスの収益をスモールビジネスに還元し、ロングテールを狙いに行こうとしています。私自身もスモールビジネスをサイドワークとして始めるのか関与するのか、手触りのある活動を何かする予定です。ありがたいことに、当社は年々企業規模が大きくなっています。しかしその一方で、自分自身の環境としてはスモールビジネスから徐々に遠ざかっていることも事実です。よりスモールビジネスを自分ごと化して捉え、プロダクトに反映させられるような活動も行っていく必要があると考えています。

―横路さんが大切にされている価値観や信念はありますか?

“好きなことをして食っていく” ですね。私はこれをfreeeで実現できています。スモールビジネスの課題を本気で解決したいと思っていますし、事実として徐々に達成できている状況です。私がスモールビジネスに提供したい価値の1つとして、「ユーザーにおもしろいと思ってもらえる遊び心があるプロダクトを作り、少しでも働くことを楽しいと感じてもらいたい」という想いがあります。freeeでは、プロダクトのちょっとしたイラストやアニメーションが、働いているときに楽しいなって思ってくれるなどを意識して作っています。

■身につけるべきスキルは “チームで成果を出せる人”

―横路さんが考える、これからあるべきエンジニア像を教えてください

チームの中でうまく自分のバリューを発揮できる人になって欲しいですね。このスキルはあらゆる環境で役立つスキルだと思います。どのようにして身につけるかと言うと、最低でも3年はチームで試行錯誤を繰り返すサイクルを経験して欲しいです。その中で、“失敗から学びを得て改善する” といったことが出来るようになり、他のメンバーと比較した自分の強みや弱みも見えてくるはずです。その他には、クリティカルシンキングも必要になってくると思います。エンジニアは課題解決のプロだと考えています。だからこそ、「なぜこの仕事をやるのか?本当にやる必要はあるのか?はたして自分がやる必要があるのか?」といったことを常に考えることで、課題解決のプロとして最適なソリューションを提供できるようになるはずです。

―エンジニアとしてより早く成長するためには何が必要だと思いますか?

仕事が足りていない環境ではなく、人が足りていない環境に身を置くことですね。人が足りていない環境では自分の能力ぎりぎり、もしくは能力以上の仕事を任せられる機会が多く発生します。私は「機会が人を育てる」と思っているので、そのような少しストレッチした環境で仕事をこなしていくと、より早く成長できるはずです。

―最後にお知らせしたいことがあったら教えてください

弊社ではエンジニアを積極募集中です!今のfreeeは多くのエンジニアさんにとっておもしろいと感じてもらえるフェーズだと思います。具体例を2つの領域に分けてご説明しますね。

◉アプリケーション開発

プロダクトでビジネスを作っていく実感を得やすい領域です。当社の場合、会計、人事労務税務申告から金融まで、並列でいろんなプロダクトのプロジェクトが動いています。そのため、一社にいる中で様々なアプリケーション開発に関われますし、多種多様な考え方に触れられるという魅力があります。

◉基盤開発

大規模な基盤構築・運用業務に関わることができます。大きな会社になると、基盤はすでに作られており、利用することはあっても作る機会は少ないのではないでしょうか。スタートアップだと、弊社ほどの大規模な基盤構築・運用業務に関わる機会はほとんどないと思います。そういった意味では、様々なエンジニアさんにとって、貴重で魅力的なフェーズと言えますね。

面接ではなくカジュアルにお話することも可能なので、興味がある方はぜひ弊社HPの応募フォームよりリクエストください!

■取材を終えて

横路さんのお話をお聞きし、「スモールビジネスを変革するのはこの人だ」と思いました。実家が営むビジネスに対しても技術で親を楽にし、急成長中の会社においても手触り感を求めてスモールビジネスへの直接的な関与を行う。ビジネスサイドでもなく、CTO自身が実態把握、課題認識をしようとしているコミット力に圧倒されました。横路さんのもとで、スモールビジネスを支えるためのスケーラブルな基盤づくりがどうなっていくのか楽しみです。

プロフィール:横路隆

Ruby City 松江育ち。慶應義塾大学大学院修了。学生時代よりビジネス向けシステム開発に携わる。ソニーを経て、freee株式会社を共同創業。テクノロジーでスモールビジネスのありかたを再定義します。